ダーは甘く響く

森の中での少しの広場

心だけが森の奥深くに在って

東西南北が分からずじまいのまゝ

蟻の行列は途切れることなく続く

蝶は肯定する

辺りは青臭い匂いでいっぱいだ

みるみる焼け焦げた戦車は赫く錆びてゆき

国境近くに無明の旗が翻った

(22,5,13朝日新聞)マリウポリ地下シェルター、アゾフ連帯負傷者約500人

 

そんな青春があってよからうはずもなく

風が吹くとそこいらじゅうに厭な音がする

みんな顔を無くして

腕と手足だけで動いてゐる

 

何十日かぶりで地上に出ると

たちまち青い森は掻き消えているのだった。

病院に運ばれるときさすがにVサインをするのだった

顔が胸の間で抱えられ

メスが手のひらで回った

翳が抉られる

ニィエットはもうすぐそこに在る

 

倉石智證