あはれあはれみな光の渦に
たとへば空の階きざはしに腰を掛けて脚をぶらぶらさせて
たとへばやっぱり紙の兵隊さんよりも軽く
もったいぶってゐてもそんなことはすぐにわかるんだ
ほらほら梅の花には光の雫が
ごらん空に架かる雲に春の潤みが
山の端や農道の向かうから春が一斉に行進してくる
もうどうにも抑えきれない意力がそこかしこにあらわれて
ことこと煮込むスープの囁き
春は来ているんだよと鍋の縁から囁き洩らす
百姓は畑に重たい上着を脱いで
どうかすると冬の間には知らない風が吹いて
こうやって気持ちよく風を受けるんだな
ちちぽぽと梅の花が咲き継ぐ
電線に留まる椋鳥にさへ
疑いなく
もう春の調べだ
倉石智證



