仕方がないので
わたしを食べてみることにしたわ
わたしの形をどうしたらいいのでせう
そもそも私の口からお尻の口まではつながっているんだもの
なにが出来るのかな。妻は天才である(笑)。
章魚の夢
蛸さんのやはらかさ
思はず身体がひっくり返る
頭が胴体の中にでんぐり返って
さあて
わたしの身体が腸の中に入ってしまへばしめたものだ
肛門だなんて恥ずかしさも一入ひとしお
ニンジンの赤、ピーマンの緑色、
肉色は饗宴の果てもう溶けかかってゐる
わたしを食べてみようとどうにか行きつ戻りつして
それにしてもわたしはどうして分解もされずに
わたしのままなんでせう
わがままなわたしめ
少しは妥協したらいいものを
自分の体の中に潜り込んでいると
まるで悲しくなって涙がこぼれて来さうになる
ニンジンさんやピーマンさんや
いろいろなものが目の前で溶けてゆくのに
わたくしがわたくしの内側にあって溶けてしまへば楽なものを
サう考えると自分以外のモノへのやさしさが急にあふれてきて
わたしはぐるぐる部屋中と云ふ器官をへ巡って
触ったり舐めたり
自分自身の身体を消化することなく食べ物だけを
分解、吸収してゆくことはおかしなことだ。
いいなあ、食物を包んでゐるわたしと云ふ器官
そっと、ふくよかなその世界の一端に触れる
倉石智證

