この靴下はようけわたしに合うんだから

わたしのモノなんだね

このスリッパはようけわたしに合うんだから

わたしに持って帰ってもいいかえ

この手袋は絵柄がいいわ

わたしにぴったりなんだわ

この足はわたしのもの

わたしの靴を探す

わたしが靴に合うみたいだから

これを買ってちゃうだい

 

手袋を脱いでご無沙汰を詫びる

この顔は笑ふたんびにやけにわたしっぽくなるね

ふんだんに手袋と顔と

右足さんと左足さんと

人と出会うたんびに右手さんと左手さん

思はずなつかしさに抱きしめ合う

 

こはごはと身ぐるみを脱ぐ

わたしの皮衣

衣文掛けに懸けやうとしてくしゃんと嚏をする

アッと振出しに戻る

全然台無しになる

それなのにみんな何食はぬ顔をしていい人たちね

(あゝ)なにもかもやたらとぴったりだったんだわ

嬉しさのあまりぴしゃんと後ろ手にドアを閉じてやっと出かける

 

そのころ人気のない山小屋では

蛇の抜け殻が陽に乾いて

部屋の真ん中にあったわよ

と誰それさんがさう云った

 

倉石智證