帽子が苛まれている

日々良心に苛まれている

その陰影を如何ともしがたいのだ

出奔を決意する

いや、決意するほどのこととも異なり

ただそれはその通りの事柄で

ただ流されるままのことだった

ピカソ「顔」

 

美はいよいよ研ぎ澄まされ

凄惨は極致に昂ぶる

蒼白な顔容の上を

ただ前を見て真直ぐに

それほど己が信じられると

確かなものへと

一歩、また一歩を踏み出してゆく

 

テーブルに投げやられた帽子に

日の陰影はますます厳しく

愛は窗下に

石畳往く蹄の音

長い行列

それを取り戻そうとするかのやうに

深々とお辞儀をする

あなたをけっして信じていないわけではないが…

テーブルの上の帽子がつぶやく

 

倉石智證