くれちゃるくれちゃる
土蔵でもなんでもくれちゃる
いらんいらんそんなものいらん
花嫁御料に金襴緞子
土蔵は赤い目玉を持ちて悲しげに身悶えします
百年も経ちてこんな目に遇うだなんて
西日差す壁土に剥落が続き
屋根も瓦に弛んできた
もう土蔵に入る人とてゐなくて
きっと有象無象とうじゃむじゃとゐたんだ
あん中に希望やら夢やら多くの係累の
しかし今はもみくちゃになって静かに百年の埃の中に眠ってゐる
土蔵は赤い眸眸して夜になると
古びた百姓家の母屋に向かって
くれちゃるくれちゃる
墓でも墓石でもぜえんぶくれちゃる
ばうと声が返る
いらんいらん
もうそんなもんいらん
やがて真っ赤な曼珠沙華
倉石智證


