水の中に棲む人もゐるらしい
夕刻になるとふっと出て来る
アオミドロのみどろ
水草をいっぱいつけて
シャッをきっちり着ていた少年はいつしか立派な青年になって
お昼時も過ぎるといつも空を見つめていた
帰りたいんだらうか
木の幹の枝の方向を指さす
ずっとおかあさんの云ひつけを守って
精一杯お行儀よくしていたんだ
水が身体の中から流れ出してくるのなんかさっぱり気にならない
ただ女の子が一緒に道を歩くときに
お着物が濡れてしまうわって云って
それでもにっこり笑った
ただそれとは別に水の中で息が出来るかどうかが問題だった
村の鎮守様にゆくといかがわしいお札があって
そんなものをいっぱい水の中に流し込んだものだが
もうそんなものが効き目があるかどうかはさっぱり分からない
気が付くと二人はぴょーんと大川を渡って向かうの土手に
赤々と夕日に照らされて
二人の影は仲良く手をつないで歩いて行くのだった
倉石智證


