白い紙きれかと思ったら

畑地の上を飛ぶ鷺だった

地表はもう三十四℃になっていた

空が白っぽく蒸散し

飛ぶたびに羽搏きはぴかりぴかり遠目に光った

あんまりの暑さに電線を越えるのも難儀に見えた

佐藤泰生「マスクに愛を 夜明け」(2021,7,18日経)

不正義を許しちゃあ不可ない

どぶ川の流れが急に停留し始め

しばらくしてザリガニくんたちもついに腹を上にして浮かんだ

低気圧が上に来て行き迷ってゐる

雑草たちが勢いを盛り返し

汗だくになってなにもかもいやだなぁ

不正直も逡巡もよくないことだ

しかし、地表はすでにもう三十四℃になってなんも手立てもない

 

紙が遠い空に

白くなったり銀色になったりして舞ってゐるのではないか

舞っていたと思っていたものがついに

ピカリピカリと焔へ始めた

あらがう、行きあぐね、停滞する

いまさら鷺が空を飛んで行ったんだって知らないよ

 

倉石智證