/堰の川水路をゆけば鴨游ぶ岸辺に赤い罌粟の花咲く

/ふるさとは花の歩みとかたつぶり

/やまばうし咲いて連れ立つ吾と妻と後先になる花に惑ひぬ

/馬鈴薯や一番乗りと花芽かな

/ヨシキリや茅花つばなの原の端辺り

/千の掌を葡萄の若枝じゃくし風さやぐ

/オオキンケイきれいと云へば風に揺れ

(オオキンケイソウ。最強外来種。)

/矢車草妻の名付けしモネの土手

ナヨフジクサ

/おかえりモネ ! なよの藤草叢立ちて

/叢立ちてたれに化粧けはひをユウゲショウ

/どんみりとさて梅雨入りの梅雨のまへ

/花茨新興住宅地の外れ

/野の師父のありせば白き花茨

放棄地に。

 

与謝蕪村

「 遅き日のつもりて遠きむかしかな」

北壽老仙をいたむ───

『愁ひつつ岡にのぼれば花いばら』

君あしたに去りぬゆふへのこころ千々に
何そはるかなる
君をおもふて岡のへに行つ遊ふ
をかのへ何そかくかなしき
蒲公(たんぽぽ)の黄に薺(なずな)のしろう咲きたる
見る人そなき
雉子(きぎす)のあるか ひたなきに鳴を聞は
友ありき河をへたてゝ住にき
へけ(=変化)のけふりの はと打ちれは西吹風の
はけしくて小竹(ささ)原真すけはら
のかるへきかたそなき
友ありき河をへたてゝ住にきけふは
ほろゝともなかぬ
君あしたに去りぬゆふへのこゝろ千々に
何そはるかなる
我庵のあみた仏ともし火もものせす
花もまいらせす すこすこと彳(たたず)める今宵は

ことにたふとき

 

釋蕪村百拜書

 

倉石智證