なんじゃもんじゃ
もしゃもしゃともじゃもじゃはちがふ
ば様はもしゃもしゃすると云ふて
もしゃもしゃは何か食べているな
と思ったらどうやらば様の記憶を食べている
まったくお行儀もなにもあったものぢゃない
mosha mosha してまったく分からんぢゃんねへ
三半規管のちっと奥に海馬くんがあって
馬といふからには走るんかなと思ったが
海の中なんか走れんじゃん
つひにば様は聞かれるたびに分からん
もしゃもしゃすると目ん玉はますます金ツボ眼に空に見開く
なんじゃもんじゃ もしゃもしゃもじもじ
何度でも何回でもおんなじこと云はれても分からんぢゃん
けふが何日だか分からんぢゃん
自分の齢がいくつか分からんぢゃん
へえ、じ様のことなんかmou忘れてゐる
私の方位の向かうにはば様の横顔があって
この間パーマ屋さんに行ったばかりかと思ったが
もう髪の毛はもじゃもじゃ
kurukurupanma あきれた
まあ年寄りでも伸びるのが早いんだねへ
もしゃもしゃもしゃ もんじゃもじゃもじゃ
伸びて来たのは髪の毛ばかりではなく
うちのば様にゃヒゲがある
ぼくの方位の向かうには柿の木が若葉に茂り
ガラス戸越にそれらを見るのは大変気持ちのいいものだ
ところがガラス戸とわたしの間にば様の横顔が隣込み
わたしが気持ちよく柿若葉を見ようとすると
わたしの視界にば様のぺしゃんこな鼻梁が無理無理映り込む
もやもやもや「うちのば様にゃヒゲがある」
産毛がもじもじともやってゐる
そんなことをしてゐるうちに小半時も過ぎ
そんなことをしているうちにお昼刻も過ぎ
ぼやぼやしているうちに一月ほどもあっという間に過ぎ
誰かさんが海馬さんを訪れる気配もなく
ばーさんは何を聞かれても
あーもしゃもしゃすると
もやもやと産毛が伸びて
パーマは朝な夕なにもじゃもじゃと自由好き勝手に伸び
あーなんだか分からんぢゃんねぇ
あーなんだか分からん
「ただいまー」
と元気よく草臥れて散歩から帰って来る
なんじゃもんじゃ
倉石智證





