陰鬱は向かうにあるペイパーに立ち込めて
わたくしが紙の林に冷えて
不思議な疑問に答をと墓石をずらし
轉乎ごろんと云ふ素気なゐ音に
魂なんて云ふものがそんなところにあるべくもないことだと
みんなは薄々と
Elle est retrouvee.
Quoi ? - l'Eternite.
C'est la mer allee
Avec le soleil.
(1873『地獄の季節』アルチュール・ランボー)
また、見つかった、
何が、
永遠が、
海と溶け合う太陽が。
(小林秀雄 訳)
おまいはページに佇み
背を向けている
それで精いっぱい反抗しているとでも云ふのかい
紙に佇つその陰影とやらをどうしやうか
あゝ、いまさらに振り向かせてみたいものだ
一歩を歩き出したい、と云ふのかね
ページから足を抜き出して
とぼとぼとあのページの向かうの原まで行ってみたいとでも
いまさら陰鬱を排除したいとまで思はないが
魂なんてものを探そうとしたが
そんなものは結局どこを探しても見当たらなかった
墓石をずらして覗いてみたんだ
黴た骨壺ばかりが並んでいて
がっかりしてまたページに戻って来て座り込んだ
まるで居心地がいい
1857,6,25ボードレール『悪の華』初版
ほらほら
どのページからも幸福感が立ち上がって来る
死者の書、ささやかな思ひ出や言葉と一緒に過去りし日々を
にぎやかな恋愛のことやもっと色とりどりの花のことなんかも
わたしがそのことをあなたに伝へやうとしてページを捲るたびに
ところがあなたはページの上の方で
わたしのことを見下ろすばかりで
鼻を鳴らして、そのうちにすぐにつまんなさうに
ページをわたしに閉じた
詩への反抗、
詩への擾乱じょうらんといふものがある
おまへが黙って立ち去りさへすれば
海への乱反射、物憂い水平線へ
おまへが立ち去った後、一陣の風が吹いて
どのページからも幸福感が起ち上って来る
間違いなく
言葉なんか信用するもんじゃないね
倉石智證
