ばーさんのお仕事牛蒡とんとんとん
とんとんとんまな板の上
正座ましましとんとんとん
長さそろへて切そろへ
きんぴらごぼう作ります
これっくらいのことでんよ(出来るよ)
お仕事あるのうれしいよ
長い牛蒡をあてがわれ
娘に云ひつけられてとんとんとん
嫁ぐまへからこんなこと
暗い竈の台所
不便は水や水甕や
外の井戸から汲んで来る
牛蒡は井戸で洗われて
まな板の上とんとんとん
裸電球なつかしい
荒神様の見下ろせる
竈に爆ぜる火に焔へる
薪は唐松クヌギ楢
脚絆を巻いたじーさんの
山から降ろして来たものよ
それとんとんとん
嫁いだ先は大百姓
姑、小姑ぞーろぞろ
ごはん食べるのも後になる
お風呂はいつも仕舞い風呂
垢の最後が身に沁みる
小姑ひとり鬼千匹
やれやれやれ、それとんとんとん
暮らしぶり夢中になれば忘れられ
時の経つのは早いもの
気が付けばそろそろみんな墓の下
思ひ出ばかりがなつかしい
はや九十三ここのそとみとせとや
指も曲がりて仕舞ひしが
お仕事あるのがうれしいよ
「出来るかな」と娘に問われ
「こんぐれーなごと」と、ところで
「教えてくん無ければごはん炊けんじゃん」
ごはん炊いたことないもん。
ばーさんはガスにお鍋をかけたまま、寝所に行ってしまう
暮らしぶり夢中になれば忘れられ
時の経つのは早いもの
日は移ろひてそれとんとんとん
「(ま)ッたく」
娘は不機嫌に二階へどんどんどん
倉石智證


