線が消へてゆく

面が遠ざかる

色を喪ひ

花の涙でありしかど

思い切り散りなさい

急にさみしくなって

振り返るときみがゐた

 

喪失、陽だまりの中に

ただならぬこと

手に触れてゐたい

足が足掻いていた

遠くを見つめていた

そんなことがあっけなく

もう証明しやうもない

そこに在ったはずのものが崩落

温もりのままに

いきなり運び去られた

 

線に消へてゆく

面に遠ざかる

初めから存在しなかったのではなく

ついさっきまで

例えば白い病棟の中に

思ひ出で云ったら畑の草むらの中に

確かに形になって

しかも何かを喋り

肯いたり否定したり

けっこういそがしくしていた

 

おーい、と。こんな小春日には

あの空の一点の鳥にでもなりたいと

自由にと

部屋とかいまさら地面とかに縛り付けらたくない

思いっきり自由にと

それらが急に消へた

口の中に木魂するざわめき

死者は語らずとも

陽だまりの中に

一切が、いまだになぞなぞか

謎のやうなことである

 

倉石智證