亡くなる方はそっと亡くなるものだから

そんなことは些ちっとも知らない

枯葉がたうたう舞い落ちる

みんなに声をかける間もなく

さやうならと

ずかにひそやかに

さァーと地面が蒼褪めてゆく

 

お入りなさい

そんなところに佇ってゐないで

ササお入りなさい

影に入るとすぐにまた出て行くことになるのですから

そんな場所があって

だあれも知らない

どこにあるんですかと聞いたら

橋の下だったり土蔵の陰だったり

庭の陽だまりだったりして

あんなところに引っかかってゐる

云い掛けた言葉が

地面に落っこちることなく

お入りなさいと繰り返す

 

枯葉たちが今その時とばかり肯きかはし

亡くなる方はそっと亡くなるものだから

そんなことは些とも知らないのに

こんどはおまへさんの番だよといきなり云はれて

ぎょっと振り向く

昔は橋の下で拾われてきたんだよと

よく云はれたものだった

倉石智證