自分の顔を手の平に乗せてみる
月に掲げて転げてみる
月の晩だものコロコロ
鼻がピノキオのやうに伸びた
1974ウィフレド・ラム「我々はここにいる」
権力なんて大嫌いなのサ
目を真ん丸にして大地のことは見ないやうにする
硝煙と砂ぼこりと
稼がなければならない人たちはなんにしても大変なんだ
それを砂漠の民が大胆にもあのアルプスを越えようなんて
地球の上で起こっていることの爪の垢ほどのことも知らないでいる
アクセルをもっと踏んでみろよ
怖がらずに思い切って突っ込んでゆく
柔らかく踏んで素早く回転する
ニュースでは何十人も死んだよ
すぐの隣の境界で平気でそんなことが起こっているんだね
眸をひん剥いて山羊が地に屠ほふらる
水寞の下では断末魔は呑んびりとしか聞こえないだらう
お祈りの時間をもう少し下さい
わたしは審判者などでは決してなく
私は私の顔を手の平に乗せてころころと
頸が笑ふんだね
1898ルドン「オルフェウス」
ただ不幸と云ふほどのことではなく
ただ漠然と不安に駆られて
けふの山羊はどっちを向いている
倉石智證

