シュウメイギクが咲いたよ

きみがシュウメイギクと云へばシュウメイギクなんだ

ば様には内緒だよ

早生わせ柿に赤い色が落ちて来たよ

でもば様には内緒だよ

ば様の指は鉤型に外に曲がって

ちっとも油断ならん

カスミソウも漕いでしまった

百合も球根ごと、大分だったなぁ

手塩に掛けたイチゴの叢も

すっかりきれいさっぱりと引っこ抜かれてしまった

 

ところでば様は落ちた蟻んこがたかっている柿を

まだお尻が青いままの林檎も拾って来る

だからみんなみぃんなば様には内緒だよ

だから早生の柿が柿の木の天辺に熟して来たことも

鵯があそこを縄張りに雀を追い出すのも

内緒にする

それにしてもまだ青い林檎は切ないなぁ

ば様の親指は外側に見事に曲がってしまったから

草のものたちには脅威だ

落ちてるものたちにも脅威だ

ば様はひとり粗土あらつちを躄いざって

屋敷からとほいあちらの道端まで出て行った

 

神に罰せられたヨブのやうに終夜薄明かりの中で自分の手のひらを見る。

神はアブラハムを試みるため息子イサクを燔祭はんさいとして捧げることを命じ、

彼は神の言葉に従った。(イサク=「彼は笑う」の意)

 

解き放たれたやうにおほほほほとば様は笑ふ

今朝、秋海棠がどこに咲いているか知っているよ

ぼくはだからば様に告げやうと思ふ

庭に秋海棠が咲いた

すっかり足元が明るくなった

シュウメイギクも咲いたよ

ぼくはそれもば様に教えて上げやうと思ふ

ば様が曲がった腰を粗土に立ち上がると

ば様は光の中へ少し透明にマブシクナッタ

たうたうぼくは柿の実も甘くなったよと

ば様の耳元で伝へやうと思ふ

 

倉石智證