/門柱を出でて散歩の人となる三千世界影一つ踏む

/ばーさんはお手紙書いた白ヤギさん秋の雲浮く横須賀辺り

自分の亡くなった伴侶の一番末の横須賀の弟さんにお手紙を書く。

認知症のことを承知のお手紙は却ってあはれ深く名文となった。

/秋草やショウリョウバッタ重なり合ふ

/ある人の誕生花てふ金木犀

/金木犀おらが頼みをどこやらに

/妻し云ふ家居の二階金木犀

/赤とんぼ地球の何を見ているの

/赤ままを顔にしげしげ見つめたり

/懐かしく碌山館や秋海棠

/秋海棠なに俯いて片想ひ

/秋海棠桃色吐息目元まで

/海棠の眠りに足らず明易く

/海棠の雨にうたるゝ風情かな

/バチマグロ妻の大根だいこのたくましく

/俤や庭に揺れゐるシュウメイギク

/頑なにテッポウユリの実一つ

/寂び色に秋は柘榴に鬼子母神

 

倉石智證