/登山路の取り付きがたき嵓塊がんかいの梯子鎖場巻いて下って

/すれ違ふ過客かかくの人と山径で労をねぎらふ一期一会の

/登ったら下りろと云ふし下ったら上がれとせかす

 キレットの園地の如し鎖、梯子の

/幾たびか山は嘘つき登り見て気を持たせつつ嶺遠ざかる

/ホシガラス飛んで山塊冷えまさる

/ホタルブクロ破れて山に霜柱

/チングルマ風に毛槍をゆらしをり

/もうすぐに冬物語池塘には蝌蚪かとの影あり薊も枯れて

/6:30(6時半)通過、働きバチの薊に

/リンドウの紫洗ふ絹の雨

/オオカメノキしず降る雨に照紅葉

/雨降れば紅葉濡れゆく扇沢

/駅見えて駅まで遠し扇沢秋の沢音足元に聞こゆ

/山小屋の水ありがたき顔洗ふ口漱ぎたり掌に溜めたるを

/山小屋の水懐かしき里に下りれば手に掬ひたる水のうれしき

/月見れば十五夜お月さん月まんまるまるまる団子薄が原の

/吾(あ)が膝に召せませ月の十六夜

/金星もなにものかたる十六夜

/どこやらに金木犀も月や出て

/早々と柿に座を占む鵯の声

/秋桜たっぷりの風揺らしをり

 

倉石智證