「だから云ったぢゃないか」と

あの下には四角四面だよって

裏側に回って探してみる

渇いてゆく木の香りが渦を巻いて上昇して行く

 

アンジェリカ、アンジェリカと

井戸の奥底には雲が水面に映って

青い空だね

約束されたまんま

しっぺ返しだよ

愛の約束なんかしたわけでもないし

山羊の仔が膝下まで来て

メヘヘと甘え啼きする

 

「だから云ったぢゃないか」とあの下には四角四面だよって

何度も何度も挨拶の度に

その影の下に回り

潜って見上げたりして

ジャンケンとか指切りとか今ではまるでまるで役に立たない

アンジェリカの裳裾を握って

ようやくに曠野と云ふか砂原に出た

人には孤独が必要で

万が一にもその時には神様にも祈ってはならない

アンジェリカの影はもう遠くに去って行って

雲と空とに攫われて行ってしまった

1957南桂子「羊飼いの少女」

 

ほらね

dawn

夜明けになる

私も何かの予兆になる

 

倉石智證