家族で西瓜を喰ふ
西瓜が真っ赤なのに周囲の景色が薄鼠色なのは
きっと何かの間違いだらう
赤とんぼはまだ真っ赤ではないが
触ろうとしたら
目玉に景色を映したまま
灰色の景色に飛び込んで行ってしまった
こんなことは決して無頓着でいられず
きっと誰かに相談しなければならないのに
動かそうとするときりきりとどうにも痛みが走る
古い写真の中にぼくが閉じ込められたとしたら
一体どうすればいいんだらう
父が死んだ、と云ふことがありうるかもしれない
母が死んだ、と云ふこともありうるかもしれない
兄も、妹も、と云ふこともありうることかもしれない
ところが周りにいる人たちは誰もかれも教えてなんかくれない
みんな一生懸命にただうつむいて通り過ぎてゆくばかりになる
ぼくは声を出して写真の中をむやみやたらに右往左往し
やっと裂け目のやうな白い光を見つけ
眩いばかりになって後ろを振り返ったら
ちゃうど11:02になってゐた
長崎に原爆投下したB-29爆撃機ボックスカー(オハイオ州デイトン国立空軍博物館展示)。
広島の原爆投下機エノラ・ゲイはスミソニアン博物館に展示されている。
家族が一斉に手を出す西瓜は真っ赤に熟れてゐて
みんなの笑い顔は今でも懐かしく
だから、今頃になって
色のない世界はどうにも馴染めそうにもならん
泣きさうになるくらいだ
まったくひどいことをしやがる
倉石智證

