屋敷には大きな青大将が棲んでいて

味噌部屋でお身ぬぐいをする

迷信ばかりがあったものだ

赤ん坊が来ては泣き止まない

はやく壊せ壊せ

ご先祖さんも三代も四代もすれば

家から出ていって地面に漂い

そのうちにあっちの山の上の方へ行ってしまふだらう

土蔵の跡地に一本ばっかしの麦が育つ

人っ気がさっぱりと無くなって

みるみる真青な麦畑になった

御新造さんに傘を差しかけると

にっこりと笑って

わたしは赤子の時は泣いてばかりいたさうよ

とまた婉然と指さしては笑ふ

 

味噌部屋には蛇の抜け殻がしらしらとあって

三年味噌は美味いゾと

屋敷跡の麦はほんたうによく育つ

 

倉石智證

ここの百年の陋屋も、ば様が亡くなった後は往くへ定まらない。

土蔵の跡地には麦がほんたうによく育つ、と云ふ話である。