折節は蝶と遊めり蕨採り───

あゝ、あそこへ行けば

サンクチュアリ

蝶の群れ飛ぶ

花から花へ遊び戯れて

あゝ、あそこへ行けば

古きなつかしい故郷のやうな山の奥処おうか

山桑の実が黒く熟れて

山蟻がたかり来る

初恋の初想ひのやうな

口端を黒く汚して

ただ無性に笑へば

空に白い雲が流れ

スカンポに青い風

原野を筋交いに鶯が盛んに鳴き出だす

幸福と云ふものがしみじみとかうしたものかと

蝶の舞飛ぶを見て

朧にほどけ行く我が視線の先に

妻を野に放ち

丈高い草に隠れ行く妻の背中を追ふ

さうして蝶が翻る度

わたしに遊心天地の外に

肩に、胸に、蝶が止まる

あそこにとほくロープウェイの廃舎が見える

肩や胸から一瞬、

過去へと時間が燃え燻ってゆく

 

倉石智證