ごくわずかな間だけれど
それを生きた人々によって
経験され、回想され、解釈される、
袋掛けなのだ
白い袋が次々と掛けられて
もう収穫までは外されることもないだらう
石を拾う
もう形にはこだわらない
それを畑の隅に置く
もう何十年とやって来たことだ
あんなところで石が渇いてゐる
いつかは石垣も直さなればならんだらう
そんなこともあって忘れていたわけではないが
経験と回想と解釈や追憶の中で
けふ、袋掛けをする
農協の人が来て畑の中で立ち話をする
義兄はあそことあそことあそこんちは未だ
袋掛けは進んでないと
そんなことでもちょっとだけ嫉妬し
安堵し、また動揺するのだ
妻はオペラを聴きながら
何千と云ふ今は緑の葡萄の房の下で
もうニュースを忘れ
鳥たちもトカゲも蛙もミミズも
係累さへもあらかた忘れ
無意識の継続と云ふ
意識として雲が浮かんでいるのを感じる
ひそやかな喜びであれ
とても秘密めかして
倉石智證








