おまへの料理は
妻よおまへさんの胸の辺りから両手の間から
ぽいぽいとぽわーんほわんと
絶え間なく出て来る
そんな風にわたしも詩の一遍でもと思ふが
ほらあそこではお百姓さんが
広大な農園を支配しやうと
玄冬の間から続いてゐた農事に
今事細かに
頭上から一閃
指揮棒を振り下ろす
もうたぶんそれは第二楽章へと入って行く合図のごときものだらう
地べたに在る野菜たちも
花とりどりに頸をなびかせる
果樹はスモモも葡萄も
小さき顆粒たちは天へと育ち
すべてお百姓さんたちの手に懸からないものはない
丹精して丁寧に
両の手の間に入れて息を吹きかけるかのやうに
育てよかし、実れ豊かに
空を吹き渡る風と合奏して
真緑に蠕動して広がってゆく
やがて夏の強烈な日差しの下で
もはや耐え切れないそれを抑えきれない生命の喜びの
煌めきたち深緑に焔へ上がるだらう
夏へと伸び上がる次へと沸き立つ積乱雲の下
この広大な農園はあなた方の意のまま
うねるやうな第三楽章へと導かれてゆくに違いない
それで、妻よおまへさんの料理のことだが───
つまり、ずっと「続く魔法の」
それを今考えてゐる
倉石智證







