1951恩地孝四郎「リリックNo.12 たよりない希望」

 

ふっふんはっ

どうも丸い球形のやうなものが頭蓋の中に浮かび

ゆらゆらと確信の一つもなく

どうも脚のやうなものが二本、

交互に頼りなく

音もたてずに

部屋の端から端へと運んで行く

まるで透明な、すこしいぢいぢと

魂のやうなものなのだらうか

精神であるとは限らない

 

いまはふっふんはッ

熱い情熱のやうなものがふつふつと

どうしても愛さずにはゐられない

とても抛ってはおけない

みるみる痩せ細ってゆく

後に従いてゆく

ハートのやうな形をして

温かく心の臓の辺りに

そのやうにしてどうも二本の脚は

けふは愛する人のためにとスーパーを横切ってゆく

 

じっとしていたんだ

動かない方がいいだらうと云はれた

思はず両手でまさぐってみた

すっぽりと腹が抜けていた

そんな暗いところで小鳥が歌っていた

肚が座ってゐると云はれたが

もぬけの殻になった

足のやうなものがふらふらと

肚を探して歩き出すと

小鳥も一緒に歌い出す

 

ふっふんはっ

どうも二本の脚のやうなものが歩いてゆく

どうも二本の両腕も忘れられまいとして

魂は頭蓋に浮かぶ丸い球形で

どうも愛は心の形で

いつも両腕は両の手の先に空っぽな肚を探り当て

どうも脚のやうなものが二本

どうも手持無沙汰な両腕がぶらぶらと

吐くいきなもの忘れられまいとして

ふらふらと

全体として歩いてゆく

 

倉石智證