「浪江の桜」(請戸川リバーライン)
あゝ、ここにもさびしいがゐて
ずーっと向かうまで連なっている
どうして黙ってゐるんですか
野や畑や村がゆっくり消えてゆく
ほんたうに一夜で村や学校が消える
未来への道を進む立場を共有しているはずなのに
桜の木の下では競って話さうとするのに
花の下では話し声と笑い声が絶えなかったのに
だあれもいない。
誰にも会わない。
静かなもんです。
シーベルトを少し感じてね、
見えないものに少し感応してね、
桜は黙ったまま、
請戸川にはうくいす鳴けど
たれもこたへてくれはせぬ
さくら咲く咲く土手の長さに
わたしの窓は閉められたまゝ
請戸川にはけふもうくいす
土手の長さに桜は咲いて
けふもけふとて人の来ぬ
おまへ元気か声かけ聞けど
花に雨降る泪雨
いつもは来たかと桜の枝が
花を揺すりて声かけくりょも
うくいす鳴いてたれもこたへぬ
さくらの花に閑もてあます
水門が錆び色に閉ざされ
わたしの窓も閉ざされ
でも、こっち側にゐるあなたは
意味があってこっち側にゐるんだから
黙っていては分からないじゃない
何か話して下さい

