丘の辺に妻を立たせて
花盛りの杜だ
春のうるみゆき
午後の遅い光が
水仙花やヒヤシンスをゆくりなく包み
すべてにやさしくまどろむ
昼の月が花桃のうへにかかり
階きざはしは丘へと続き
丘に登れば間遠に
あんな遠いところまで畑が
桃色の帯になって霞んでゐる
よくこんなとほくまで来たじゃないかと
褒むべきか、伝へるべきか
空から光の縞が妻へと落ちて来て
眩しむ
春はいいなあ
忘却、すべて世間から忘れ去られて
たったの二人きりになる
歩くところがすぐにすべて愛おしい思い出の場所になって
妻の指さす方にわたしは
首肯する
丘の辺に妻を立たせて
花盛りの杜だ
耳をすませば縄文の風があたたかく吹き寄せ
一瞬、眼裏まなうらが空になったやうな
そこで、わたしは歩みを止める
まっ黄色に染まった連翹れんぎょうの傾なだりを階段に下りて行く時
何人かの恋人たちにすれ違った
倉石智證
中央高速釈迦堂SAには「縄文博物館」があります。
いまは花盛りの丘に。
勝沼からの甲斐盆地は、桃の花盛りで桃色に朧に。







