「塹壕」(応召)

 

 

     チェチェン紛争は2001,1月に。

     民族紛争のきっかけはスターリン時代にまでさかのぼる。

     チェチェン共和国の首都グロズヌイ郊外で 

     警備にあたるロシア軍兵士=AP

     (2014,3/3)

 

 

1月に雪が降る

それは何のためか

雪は祖国を隠す

 

2月に雪が降る

それは何のためか

それは虚偽を正すためだ

 

3月に雪が降る

それは何のためか

兵士は応召される

それは祖国を守るためだ

 

兵士たちは何処に居る

兵士たちは塹壕に居る

奥歯を噛みしめて寒さに耐へてゐる

カラシニコフを握りしめて

                冷へた鉄鞘てつしょう

 

 

 

 

 

 

 

                 のにほひ

 

 

 

 

 

             、あれはとほい夢だったが

 

 

今は固い土を背中に感じ

長いこと黙りこくってゐる

 

戦車の中に居る人間に

あなたは何をしてゐると問ふてはならない

きちきちと照準が合わされ

国旗が鉛色の空に高く掲げられる

 

4月に雪が降る

それは何のためか

それは春が来ることを知らせるためだ

泥濘が確かに遠のき

多くのことで間違いが正されると

広大な大地が緑いっぱいに潤され

やがて小麦色の黄金色に埋め尽くされる

・・・・・・・・・・・

 

8月に雪が降るとしたら

それはどういふことか

さうだとしたら

確かにそれは奇跡を遂げるために違いない

兵士たちがもうそこに帰って来る

 

倉石智證