あなたは嘘ばかりつくから

別れましょうと

あのページの中ほどに栞を挟んだ

それがそっくり橋のたもとで戦争は終わった

丸太棒のやうに味気なく

少し恥ずかし気に躰を縮めて市民が転がってゐる

1944ブレッソン

かーさんはよく云ったものだ

寒い所へ行くときは何枚も重ね着しなさいと

腋の下の綻びを何度か繕って

春がやってくる前には戦争は終わりますやうにって

腕を元気よく巫山戯ふざけて上げると

不揃いな縫い目がよく見えた

 

美しい誤解を重ね合ふほどきっといけないわ

雨の中をとぼとぼと

雨はやがて雪になる

睫がぬれるほどに沫雪あはゆきが降って

涙かどうか区別がつかないほどにもういやだ

丸太棒のやうにだなんて

誰かが死ぬと

そしてそれをきっと哀しみと云ふんだ

 

倉石智證