「あっちだ !  」

耳さんがそれをとらえて

眼がじいーッと追いかけてゆく

「さあ、行こうか」

と云われる

1921パウル・クレー「バルトロ:復讐だ、おお!」

 

鳥居を出たり入ったりするたびにえらい歳をとるやうだ

テキスト(意味論)を探しに山に入る(と云ふやうな)

たきぎが落とされるたびに菟は

びくっとして長い耳をそばだてる

何度読んでも給付付き税額控除が分からない

菟は眼を真っ赤にして

森ぢゅうを駆け巡る

自分の頭がどうかしちまったんじゃないかと

国語力、国語力とぼそっと耳元で囁かれる

脱兎のごとく駆け出して

一目散に切り株を目指して

「貧困は個人の問題ではなく世帯の問題なんだ」と繰り返し

鳥居(テキスト)を出たり入ったりするたびにえらい歳をとるやうだ

 

身体が真っ白になる

はやく冬が来て雪が野原を埋め尽くさないかな

「あっちだ !  」

耳さんがそれをとらえて

眼がじいーッと追いかけてゆく

 

倉石智證