1903~10ころルドン「オルフェウス」
あんなところに───
ゐないと思ったらきみはほんたうにおおらかだね
穴ぼこを掘って暮らすだなんて
外は静かでお空に星が瞬いていた
どうも下へは下りられそうもないので
上からのぞいて声を落とした
穴ぼこの上には丸いお空がぽっかりと空いた
両手の指で十を数える間にも
百も千も超える人の命が地上では消えて行って仕舞ったと云ふ
足の指も足して数える間に
万を超える鉄砲弾の弾烈が国境を越えていったらしい
私たちがなにか悪いことでもしたと云ふのでしょうか
悲嘆が足元に崩れ折れる
魂が空へと抜けると包んでいた布切れだけがそこに空虚に残った
考えても見てごらんとおまへさんはわたしに云ふ
ずっと下の方にあなたの顔がうすぼんやりと見える
いつもは下からの用事はバケツに入れて上に引き上げてもらう
地上の笑い声が遠ざかって
上からぱらぱらと土塊つちくれが落ちて来る
いっそ埋めてくれるか、と云ふことになった
彼のことなんだがきみはほんたうにおおらかな奴だった
それで少しも苦しいと云ふことはなくむしろ温かく何かに包まれて
永遠の蛹になって世界を感覚し続ける
倉石智證
