/テーブルを野原に出して赤蜻蛉母と娘の長き会話の

/千の手のおいでおいでと芒の穂

/山路来て芒が原に妻置きし

/秋の蚊の来て見てわれを驚かす

/秋の蚊やThink Pad と云ふことも

/女郎蜘蛛の蝶待つことの気長かな

/台風や畝に枯れゆく豇豆ササゲ持つ

/味噌スープ里芋白くやはらかく

/芋っ子の朝餉の湯気の白さかな

/南京や人刺すことの話しして里芋のごと茹でし里芋

/アドニス応へてよ金木犀の香り

/秋の陽のいっぱいためて山の茱萸ぐみ

/緋紅葉襖隣りの鼾かな

/ぬくぬくと布団に寝ては秋出水

/木杭露はれて西王滝に魂泛ぶ

むかし僕の友達は水難に遭ひ、この西王滝のダムに泛んだ。

/菜の花の故郷こきょうに濁水にごりみず奔り

飯山、菜の花ロード「道の駅」前の河川敷菜の花畑は水の池になってゐる。

/水魅眠る饑ひだるさ乾き柳陰

/櫂潜り船に漕ぎゆく赤蜻蛉

救命ボートも。

/暗号を綿毛で飛ばす秋の景

/藪漕ぎや茸この子の押し黙り

/卸す手の楽し大根初茸

 

倉石智證