1933パウル・クレー「ぼろきれお化け」

 

見違えるやうだと

道を間違えた

蝦蟇蛙が道に出て来て

失礼な奴だ

ぼくに尻を向けてゐる

 

帰れ帰れと顎をしゃくる

癪な奴め

見ず知らずの見違える

水馬みずすましの筋違い

水に済まして

お澄まし

おっとここで腹を立ててはいけない

まんまとその手に喰はなの三角塩むすび

しおしおと交番にお尋ね者を訪ねる

 

蝦蟇蛙が道に出て来て顎をしゃくる

嫌味な奴だが愛嬌がたっぷり

跳べ飛べと誘うから少し助走を付けて飛んだ

肩の辺りがぬるっとして

一丁目の方まで飛んで行った

お巡りさんが挙手をして僕を見送った

 

夕日が丘で六法を踏む

すっかり仲良しになったぼくらは肩を並べて

水馬のスイー、スイー

筋違いのお澄まし

見違えるやうだと玻璃亂漫のビルの谷間で

おそらくは口をあんぐりと空けて

ぼくらは

 

倉石智證