1908ルソー「人形を持つ子供」
キャベツ in ガレージ
日に透かされて
不思議だ
坂の上のおばあちゃんは
手ぐすね引いて待ってゐる
お鍋にぐつぐつ魔法の林檎
真新しい車はぴっかぴかなんだけれど
急に手持無沙汰になっちまった
なにしろ街の上には何でもある
樽には葡萄の液が永い眠りにつき
キャベツの畝は畑にずーっと続いてゐる
とほくの海峡を船が渡ってゆく
眠くなるほどの
とりたてゝキャベツ in ガレージ
魔法使いのおばあちゃんはお前掛けの下に皺くちゃな手を隠し
お鍋にぐっつぐつ
真っ赤な新車で世界旅行を夢見てゐる
だれか遊びに来ないかな
何しろ退屈が一番よくない
生あくびを噛み殺し
テーブルを二周、三周する
今からなんだけれどわたしは世界征服をする
新鮮なキャベツはきっと世界の役に立つと思ふ
胸を張って腹を突き出しておばあちゃんは
登録しておいてくださいね
わたしは退屈してますからね
おばあちゃんは満面の笑みで若い男の子にさう囁く
キャベツ in ガレージ
お鍋には真っ赤な林檎を
倉石智證
