19,9/24四方田犬彦氏ベイルート
まるで別な時間の中に行って
そして海の水平線を眺めている
「・・・への手紙なのか」
「・・・からの手紙なのか」
便箋を海へと投げ棄てる
きっちりと別れを告げたつもりなのだが
水平線をきみへの想ひが奔ってゆく
真っ白な帆だ
それからテラスに降り立って、
飲み物を注文する
あなたはこの水平線は
いつも眺めるたびに
自分を幸せに連れ出してくれるやうな気がすると云ふが
ぼんやりとした時間の中で
遠く旅立ってしまった者たちに対して
つひにお別れの言葉が口をついて出る
革命だなんて・・・
苦い思いは永遠に続くのだらうか
写真に氏の文章が続く───。
ジョスリーン・サアブは1978年にベイルートのこのカフェレストランで
『ベイルートからの手紙』の冒頭を撮影した。
それから4年後、カフェは侵略してきたイスラエル軍によって跡形もなく破壊されたが、
やがて再建された。
彼女は40年後の2018年、重信メイをめぐるドキュメンタリーを同じ場所で撮影し、
それが遺作となった。
ハンナ・アーレント、重信房子、ジョスリン・サアブなどの名前が
どうやら氏のキーワードであるらしい。
倉石智證
