ここはおらの陣地だと云ふ
八月が降りて来る
容赦もない陽光に夏草が歓呼の声を上げる
十日も経てば傷口はすっかり癒えて
そればかりか伸びあがり、ねじ曲がり
あれはひとつひとつの葉っぱに眸を据えて
夜の夜中にすでに企みが完成するのだ
おらの陣地だとダイナモの音高く
羽根車は殺気ばしって
草の根と葉と茎を木っ端みじんにしていったものを
確かに生きとし生けるものの断末魔の声を聞いた気もしたものを
鼻で笑ふものがゐる
すぐさまにせせら嗤ひが聞こえる
クマが家に押し入り
冷蔵庫を押し開けて
モノを喰ひ荒らしていったのはすぐのことだった
大きな熊の影が塀を軽々と乗り越えた
ここはおらの陣地だと云ふ
むかし人間どもは腹暗く犬を村の境界に放し飼いにした
あれから犬はすっかり人間になつき大人しくなり
あれら達との境がいよいよ夜に榕菴した
八月が容赦なく陸と空とに降りて来る
まがい物などなしに
ここはおら達の陣地だと云ふに
委細構ふことなしに
獰猛なスズメバチは顎の歯をガチガチ鳴らしながら
庭先から飛び込んでくる
悪い夢なんだ
人間は大丈夫か
倉石智證




