カワイイを探しに行かうとして

それは玄関先に仰向けにひっくり返ってゐる

蝉の抜け殻だったりして

もう小さな蟻が列をなしてたかってゐる

こんもりと食餌にありついてゐる

 

またカワイイを探しに行かうとて

川岸近くまで出れば

誰かが捨てたのかウグイが石の上に干からびて

眩しい空の上に鳥が旋回する気配を感じる

カワイイを探しに山に踏み入れば

すぐ足元を蛇が逃げてゆく

追い詰めて追い詰めて首根を捉まえて

なんであんなにぼく自身が怒ってゐたのかわからない

 

夏休みは首筋にびっしょりと汗を掻いて

それこそ逃げるやうに村の家々の小さい影をひろって歩いたものだ

高いホップの畝が風にわさッと揺れる

貧しいからとボテを放り出して家に帰ろうとすると

薄暗い土間からオヤジの

「…貫目」と云ふ声が追いかけて来る

 

しかし、連中はそろいもそろって

みんな我知らんとばかりに

なんて冷たい涼し気な眸でぼくを見やってゐたものか

 

倉石智證