あどけない顔のあどけないまゝに咲ゑまふ
そしてそんな天然の造形を午後のランチの中に置く
ぼくらも微笑み返すのだ
どうして無為を楽しめるのだらうか
見渡す限りにおいて
名前もまだない林のなかに在って
ことことと音をたてゝ笑ふ
小気味よく、よいではないか
彼女はそこでプリンのやうにやはらかい肉付きの腕をふるって
突如として我がまゝに名前を呼ばはる
アーちゃん、マーちゃんとか、クーちゃんとか
そしてそのたびに取り囲む大人たちは意味もなく笑った
ほめたたえるのだ
すべてに名前の付けられる以前の事物の記憶を呼び覚まそうと
ことごとく名指しして、それはなにと
記憶達が静寂しじまとなって辺りを取り囲む
彼はタレ、たれそれではなく
記憶されたものたちはことごとく蒼褪め
わたしに欲しいのだ
肯んぜなく額にしわを寄せ
しかし、何にもましてわたしはそのことを云ひたいのだ
名前已然のものをもの欲ほりて
それは不意に鳴き止んだデデポーポーの声に似て
あらー、襁褓濡らしているわよ
とママの声に混じる
倉石智證


