鹿屋にて。
蝉にしてみれば毎日が鎮魂で
また八月がやって来たよ
戦争が廊下の隅に立っていて
前へならへ、とお辞儀する
おかっぱ頭の少女は清潔で
ノミやシラミがいっぱいたかっていたね
木の根方の穴ぼこからいっぱい出て来て
明け方、抜け殻だけを残して
奇妙に消へて行った
知覧にて。
リュイとリュイと泣くんだ
悲しみだかうれし味だか分からずに
穿たれ、身を全身に震わせて
もうとっても切羽詰まって
だから開聞岳を目指して
日の丸の赤い旗色に陽が滲んで
はるか下方にゐるたくさんの妹たちに
翼を振ってバンクする
さやうなら、行って来るよ
帰らぬまゝに、ぼくの白いシャツは清潔に畳まれて
寝具の上にある
ほんたうだよ
明けやらぬ夢に見るくらいなら
ぼくを搔き抱いて泣いてくれたまへ
鎮魂の八月
何もかもが清潔になって
み柱がしらしらと立って
お言葉が始まると、たへ切れずに一匹の蝉が
柱に留まり
みぃんみぃんと、鳴き出す
倉石智證





