夕間暮れがしずしずとやって来る

ツバクラメが一羽、二羽、三羽と

庭の上を低廻して緑の畑の方へ

五羽、六羽、七羽と土蔵の壁のまへで遊ぶやうに翻り

翻りして風を掘り起こし

風の波に乗るかのやうにあきもせで

あゝ、あそこかと思へばもうここに

あそべあそべツバクラメ達

ゑうなきものにこの夕間暮れに

わたくしが窓辺に寄り

わたくしの目の前まできてふうわりと視界から消える

母屋と土蔵の間が海に出る海峡になる

そこを自在に行ったり来たりして

ツバメ、ツバクラメ達、風のサーファーたちよ

そんなに遊びたいんか

波乗りしたいんか

羽ばたいたかと思ふと滑空して

ゆるやかなカーブがいきなり空を指す佇立になる

無数のゴマ粒のやうな点になって電線の彼方に行ったかと思ふと

夕間暮れが、あそこにまた一段と山の端に下りてきて

燕、ツバクラメ達、

それもみんな君たちの身の健やかさに尽きる

有線が鳴ってゐるよ

よい子のみんなはもうお家に帰るんだよって

みんなお家に帰るんだよって、

そんな放送がさみしくあった。

 

倉石智證