ぼくにそしてそのうれしい言語言葉をくれたまへ

奇妙奇天烈なそれでゐてなつかしい

何億年か彼方に

どこかできっと耳にしたやうな

クックドゥドゥ

もう起きなさいと欠伸交じりのわたしに急かす

ゴビラッホは蛙で

青い蛙の鳴き声は空に水気を呼び戻す

デホウホー、デホウホーと

思ひきや今年も勝手にやって来た

木下闇を低く飛んで抜けて

電信柱のいつものところで不意に恋を語り始める

カッコーは深い森の木管楽器で

カッコーは静かな湖畔で

鏡のやうな水面にさざ波が立ち

皴しわなおばあちゃんが曲がった杖を引いて

「静かな湖畔」を急に歌い始める

真っ赤な唇がゴムのやうに伸び縮みする

 

リュリリユリはつばくらめ達

風の中を電線に並んで揺れる

カッコウが村の空を横切って鳴いてゐる

ケーン、ケーンとあれには雉が放棄地で鳴き出だし

すべてに思慮深くあれよと

ヨシキリが新興住宅地の隣の

ギョギョシギョギョシ

葭の茂みの中で不意に不穏な来客を知らせる

ゴビラッホ

水無月から七夕へ、空は水気を孕みゆき

爪で傷をつけると

水は空の窓に滲み始め

やがて窓にきっぱり雨を降らし始めるだらう

遠くへ、そして遠くへ

一瞬たりともなくためらいもなく

空が晴れてきた

ゆうに決意するのだ

そこでぼくに、

そのうれしい言語言葉をくれないか

ギャアギャアと呼ばれる椋鳥、

おまへではなく奇妙奇天烈なそれでゐてなつかしい

ぼくは今、

鳥の言葉で笑ふ言葉を

はげしく欲してゐる

 

倉石智證