小さなハート形のものをいくつも小舟の上に並べてみるんだ
小舟に引き上げてみるんだ
舟が進むといくつもの無数のハート形の緑のものが
舟に浮かび始めるんだ
漂ひ出たものはすぐに自由になって行き来する
流れゆく季節の小舟に活けて空に捧げる花は
多分悲嘆であってはいけないと思ふ
緑の葉っぱはハート形がいいと思ふんだ
舟の行き先はあらかじめ決めてないから
笑ひさんざめくものは笑ひさんざめく
しめやかに水に流れ出たものはとほくとほく
思ひ出のやうに広がってゆく
ところで「愛する」───
それがもっともむずかしいものだと忘れていた
緑のハート形のものがいっぱいあればあるほどいいと思ふんだ
小舟が岸辺を離れてたよりなく水面を滑りゆくとき
うつろふ季節に
乳色の靄にあやうく消えて行きそうになり
見え隠れしながら、
でも断じて
萎たれることもなく
赤は赤い色に
小舟の上に咲き続ける
倉石智證