すべて生きてゐると云ふことの中にある重要だけれどごくささやかな一部分。
われわれはそれを繰り返し生きてゐる。
ぽういぽういと行くのだ
草笛を吹いて行くのだ
梅の実が黄色に熟するころ
枇杷の実に指を濡らす
桑の実は黒く光って蟻ん子の高所となる
長い道程があってやっと
人生の少し開けたところに出る
しかし、でも
山桑は山にさみしい
足元にアカツメクサが繁り
蟻んこにも長い道程があって
やっと桑の実にたどり着く
とほい空を葉ずれに見やると
雲がゆっくりと動いてゆく
おほかたは間違えたことばっかりだったが
蟻んこほどの冒険でもなかったろう
桑の実に指と唇を黝くろずませ
草笛をまた吹き鳴らす
ぽういぽういと行くのだ
かーさんが呼んでゐる
蛇が木にゆっくりと目覚める
倉石智證