/花落ちてみな風羅坊となりにけり

/梅捥ぐや早や梅雨入りを報せけり

/瓶に漬けし小梅の聞くは緑雨

/繰り言の階下に続く緑雨

/雛の子の声の途絶えし木下闇

/花散らす柿の木に椋鳥ムク留まりけり

/うら若き白さ羨む柿の花

/農事から帰る燕も帰り来る

/ツバクラメここ海峡のごとく飛び

/気が付けば四照花やまばうし咲く家であり

/草笛やオッペケペッポーペッポッポー

/君が代闌今を待たるゝ令和かな

/苜蓿うまごやし花輪作りしとほき空

/栴檀せんだんの木の香を潜り作業場へ

/栴檀や花は樗おうちと慰めり

 

倉石智證

栴檀(樗)

花は甘い香り。

防虫、防臭の効果も───死人の首をぶら下げたと云ふ話も。

栴檀は双葉よりも芳し・・・。

 

安政6(1859年) 5月25日(6月25日)吉田松陰は野山獄から江戸に檻送される。

獄中でかねてから敬慕の念を抱いていた女囚・高須久子は、

「鴫(しぎ)立って あと寂しさの 夜明けかな」(松陰の別名「子義」)

檻送される吉田松陰に手拭を渡す。

「箱根山 越すとき汗の い出やせん 君を思ひて ふき清めてん」(松陰)

松陰は護送される竹籠の中である。

「手のとわぬ 雲に樗(おうち)の 咲く日かな」高須久子

「一声を いかで忘れん 郭公(ほととぎす) 」

時鳥は不如帰とも。

二度ともう帰ることはなゐだらうという、

それでもと云ふ愛の瞬発力。

梅雨曇る、どんみりとした空だったのだらうか。