/春風の頬なぶりゆくばーさんのいくら呼んでも柿若葉風

/ばーさんのフェルメールでもあるまいに牛乳瓶を脇に置きつゝ

:玄関の三和土の鉢植えのマツリカが咲いた。

ばーさんは何か頼んでも必ず寄り道をする。

/玄関にあとのマツリカ寄り道すもの頼んでもとに帰らぬ

/ばーさんは草引き媼口ずさむピッチピッチチャップチャップランランラン

突然草を引きながら軽くかろく歌い出す。

/デデポポーのふと鳴き出だす青葉翳

/春風や土手の永きに草引き媼

ふと気が付けば散歩の途中の道端の草まで引いてゐる。

本当の“道草”である。

そして行方不明と探しに墓地に来てみれば───

/来てみれば探してばばの寺の庭よその墓まで草引きをりぬ

/口唇を真一文字に結んでは股覗きする春の一徹

 

/ばーさんの指ひん曲がる草引き媼老ひの勲章墓の中まで

そして、ば様の指は見事に両指ともにひん曲がった。

/春雨の絲老人の繰り言の

/バーゼルでウグイを掬ふ四つ手かな(TV)

バーゼルの老人たちはライン川にせり出した小屋にたむろし、

四つ手網に日がな興じてゐる。

 

倉石智證