/青空や雲足元に代田塗り
/葉桜やその色が好き紅乙女
/甲羅乾す亀花片はなひらを花筏
/踏みつけぬ邪鬼に花散る鼻のうへ
/一陣の風ケシの花、花靨えくぼ
/柿若葉老姉妹には長電話
/颯爽とSSの音麦の秋
/母の日やその母のばば母の日や
/真竹まだけ喰ってしみじみと聞く竹の秋
/草笛の待たるるばばの散歩道
/食べられる春を探しに道迷ひ
/梅捥もぐや盥に落ちる梅の音
/葉葉葉葉葉乳ぜりする兒をステッチマオウカ
「短夜や乳ちぜり泣く子を須可捨焉乎」(竹下しづの女1920)
須く捨つる可き焉乎(すべからくすつるべきいずくんぞ・・・か)(反語)
自らに対する反疑問の「乎」
美智子上皇太后
「子に告げぬ哀(かな)しみもあらむを柞葉(ははそは)の
母清(すが)やかに老い給ひけり」(1978)
「四照花(やまばうし)の一木(ひとき)覆(おほ)ひて白き花
咲き満ちしとき母逝き給ふ」(1988)
三好達治『測量船』(1930)「いにしへの日は」
いにしへの日はなつかしや
すがの根のながき春日を
野にいでてげんげつませし
ははそはの母もその子も
そこばくの夢をゆめみし
ひとの世の暮るるにはやく
もろともにけふの日はかく
つつましく膝をならべて
あともなき夢のうつつを
うつうつとかたるにあかぬ
春の日をひと日旅ゆき
ゆくりなき汽車のまどべゆ
そこここにもゆるげんげ田
くれなゐのいろをあはれと
眼にむかへことにはいへど
もろともにいざおりたちて
その花をつままくときは
とことはにすぎさりにけり
ははそはのははもそのこも
はるののにあそぶあそびを
ふたたびはせず
柞ははそ=枕詞「母」にかかる。古代では小なら、クヌギなどの類の木を。
倉石智證





