そこに晩御飯みたいな
缶ビールみたいな
恋人未満みたいな
あゝ、とても泣けてくるなぁ
空が青いのはなぜか知ってゐるよ
あゝ、とても悲しいからだよ
知らなかったんだけれどあの人にもあの人にも
別れが来る
桜の花の後ではハナミズキがこれでもかといっぱいに咲く
出掛けて行ったんだけれど
帰ってみたらだれもいなかった
そこに鞄みたいな
花束みたいな
ある物を容れる器みたいな
極端に云へばとても平和みたいな
なかよく全部そろってゐた
なにしろうかつだったなぁ
すぐ隣のきみのことを知らなかった
新聞のことや雑誌のことや
ニュースばかりでなく
それから後の季節のことなんかもぜぇーんぶ
なんて云ふことでしょう
この手触りをあなたに伝えたくて
言葉ではなく実際に花にとか
波に濡れてゐる砂とか
指の間から零れ落ちる
砂にとか水にとか
ほとんど温かいとか冷たいとかについて
そこでつい通りすがりのあなたに
夢のことを話してゐる
晩御飯みたいな
缶ビールみたいな
恋人未満みたいな
鞄みたいな
花束みたいな
或る物を容れる器みたいな
極端に云へば平和みたいな
もう口に出して云ふと間に合わないみたいな
もう言葉みたいな
あなたの片割れ
影だらけの
出掛けて行ったらもうそれだけでは
とても間に合わないの
デス。
倉石智證