Snow falls on the country of sorrow ・・・

「3.11」から早や1週間が過ぎだ。

時はわたしたちを置き去りにしながら足早に過ぎてゆく。

災害列島日本では全国いたるところでまだ、死者を悲しむ殯もがりが続いてゐる。

「3.11」に先立つ2/3「降りつむ」(毎日新聞出版編)が全国の書店で発売された。

2/9に皇后陛下の詩の朗読「降りつむ」が映像ANN NEWSで放映された。

凛凛と響く深い静かなお声である。

もはや「寄り添う」ではなく、あたかもかなしびのなかへまるで、

ともに入り込まれているかのごとくである。

 

かなしみの国に雪が降りつむ

かなしみを糧として生きよと雪が降りつむ

失いつくしたものの上に雪が降りつむ

その山河の上に

そのうすきシャツの上に

そのみなし子のみだれたる頭髪の上に

四方の潮騒いよよ高く雪が降りつむ。

夜も昼もなく

長いかなしみの音楽のごとく

哭(な)きさけびの心を鎮(しず)めよと雪が降りつむ

 

ひよどりや狐の巣にこもるごとく

かなしみにこもれと

地に強い草の葉の冬を越すごとく

冬を越せよと

その下からやがてよき春の立ちあがれと雪が降りつむ

無限にふかい空からしずかにしずかに

非情のやさしさをもって雪が降りつむ

かなしみの国に雪が降りつむ。

 

美智子妃が最初にこの「雪降りつむ」(永瀬清子1906~95)を朗読なされたのは

1991のことである。

美智子さまは永瀬の作品を含め、つとに詩や歌の英訳や朗読をなされてきた。

大戦で破れ尽くした山河に1948永瀬清子は「雪降りつむ」を発表する。

1935ころ永瀬清子

 

我が国は三十一文字は云ふまでもなく詩歌の国である。

万葉の詩からはじめ、生きとし生けるもの吐く息、吸う息にそのリズムが埋め込まれてゐる。

不思議なことに万世一系がその淵源になり、それらを包摂してきた。

 

1930三好達治『測量船』「雪」

太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪降りつむ。

次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪降りつむ。

もはや主人公が模糊として見えないほどに不思議な詩である。

「Snow falls on the country of sorrow .」

殯りに殯り、列島に悲しみが続いてゐる。

皇后さまはこの国を「悲しみの国」と断じられているかのやうだ。

 

東日本大震災───

避難生活約5万2000人、

2万2131人(行方不明者、関連死含め)、

約3100(プレハブ仮設住宅)。

(2019,3,11朝日新聞)

岩手県宮古市の田老の防潮堤で10日夜、追悼行事「田老夢灯(あか)り」が開かれた。

犠牲者に祈りを捧げ、紙灯籠(とうろう)に火がともされた。

左上は震災遺構のたろう観光ホテル。

右上は新たに建設中の防潮堤=西畑志朗撮影