気付かされる
落ちていったものを拾いに出る
拾わされる
本当に本質的なものは何かって
本能のやうなものだ
それがまるく蹲ってゐる
歩いてゆけばきっと気付かされるだらう
こんなにも抽象的なものといへば
とりとめもなく
あゝ、急に集まったり
ゆっくりと広がっていったりする
どうしてもつかみきれないのだ
匂ひと云ふ
名前がなく
あなたでもなく北の方に
突然それに雪の匂いが混じり出す
たぶん膃肭臍おっとせいの血の匂いも
言葉ではなく血の匂いを
急に重たくなる
手に落とす
わたしと云ふふうな
地を低く犬の姿勢で歩いてゆけば
目にするのはいつもの優しいあなたの眼であり
雲のやうに包み込む全体で
そして寸分たがわずこっちの方に歩いて来るのだらう
何でもないなんと云ふことが奇跡なんだ
ここでは干し草の匂いが漂い
猫の乾いた尿の臭いも
菫の花の香りも
それらをN(お前)と云ふ名前でひとくくりにはとてもできない
例えば実際に空に在る太陽のやうに
ぎらぎらして
真実
唯一無二の
不意に
それを憶い出す
倉石智證