God be with you til we meet again。
「また会う日まで、また会う日まで、神のまもり 汝(な)が身を離れざれ」
林檎の歌を聞きに行ったのだが
リンゴはもう歌はないと云ふ
葉っぱを全部降り散らした後で
林檎の歌を
これがよからうと手で触り
するとそれは鳥に啄まれてゐる
これならよからうと裏返してみると
無惨に腐れ始めてゐる
霜にやられて色も変わってしまった
人間の手が届かないからと云って
梯子の下で林檎の木を見やる
こんなにも晴れているのに
世界は少しずつ風に病んで
林檎に病疫をもたらした
お歌いなさいよ、と云っても口を噤み
ほほ笑みは、とせがんでも
よそを向いたままだ
あゝ、世界がこんなにも腐って行ってもあなただけは
と思ってゐたのに
知らないうちに奇妙な果実に
葉っぱは全部地に落ちて
食べられもせずいくつもにぶら下がってゐる
歌ってよ、と云っても黙ってゐる
X'mas マーケットに行けば真赤なリンゴが
X'mas マーケットに行けば真赤な頬の少年や少女たちが
みんな背伸びして歌を唄って
ぼくたちわたしたちはみんな仲良くしようね
と云ってゐるのに
赤いローソクの火が揺れる
少年や少女たちが大きく口を開けて歌っている傍ら
いまではこの腐った林檎を取り除こうかどうかと
考えてゐる大人たちがゐる
倉石智證